「ヒトの壁」 養老孟司 著

読書備忘録

本に関する、備忘録に近い記事となります。

最近読んだ本だけでなく、

昔読んで感銘を受けたり、単に好きだったものなどを

紹介していきたいと思います。

コロナ下で書かれた本

この本もまた、家人から「読んでみたら-」と渡されて

積ん読していた本の1冊です。

手に取ったのは、養老先生といっしょに

猫のまるがうつった写真が帯に使われていたから…

というのは、いうまでもござんせん。

積ん読本に関してはコチラをご参照ください。

「バカの壁」でベストセラーを飛ばした養老先生の最新「壁シリーズ」。

2021年12月発行とあって、

第一章は「人生は不要不急か」となっています。

前半は、コロナウイルスについて、

またアベノマスクや東京オリンピックなど

時事的な事柄を背景にしつつ、

いまを生きる人々に、「本当のところはどうなんだ」

「ものの見方で見え方が変わる」と問いかけているように感じました。

とはいうものの。

エントロピーの法則とかボルツマンの方程式とか

養老先生にとっては、みんなが知っている教養…という

認識の言葉なんでしょうが、その教養が欠如している身としては

こういう言葉が出てきただけで、ちょっと身構えてしまう。

また学者の説にを引用しつつ「詳しく知りたければ本を読んでください」等の

記述がいくつかみられて、単なる引用ではなく

養老先生が咀嚼して提示してくれているものの

こちらの知識と教養のなさを指摘されている気に(勝手に)なってしまい

「なんか、すみません」と言いたくなってしまったという。

とはいえ、そのあたりを「スミマセン、スミマセン」と

通り過ぎながらも、するする読めてしまう不思議。

先生、入院してたのね…。

教養に欠ける私にとっては、むしろ後半からの方が

読みやすくわかりやくなじみやすかったです。

4章の「人生とはそんなもの」では

2020年頃の養老先生の近況が綴られているところから始まります。

この本を読むまでは知らなかったんですが、

養老先生、入院されていたんですね。

しかも心筋梗塞でICUまで入っていたとは。

幸いにもICUは2日間、入院は2週間と短くはないものの

無事に帰還されてないよりだー!

そういえば、少し前にテレビでお見かけした際

「あら、なんか小さくなったような」と感じました。

そのときはお歳のせいかと思いましたが

病を患ったためというのもあったのかもしれません。

今回の入院のいきさつから、戦時中の幼少時代の入院の話、

開業医であった母親のことを交えつつ

人生についての考察が綴られます。

その後、5章では「自殺する人とどう接するか」

6章「なせばなる日本」、7章「コロナ下の日常」と続きますが

日本人の考え方の、独自の方向性みたいな話を交えつつ

生について死についての話が綴られます。

4章以降は非常にスムーズに読み進められ

「う~ん」と唸ることしばしばでした。

そして本の後半でも、引用はいくつかあるのですが

エントロピーとかじゃなかったせいか

それとも自分が多少知っている事柄であったためか

「スミマセン」の気分も沸かず。

というか、『「そして、みんなバカになった」(橋本治、河出新書)』という記載に

あー!治ちゃんの本が載ってる!とうれしくなったりして。

(好きなんですよね、橋本治。思えば、養老先生の本との出逢いは

橋本治氏の著作がらみだったかもしれない。それで勝手に親近感を

持っているのかも。ろくに著作を読んでいないのに。)

養老先生は著作が多い方ですが、私はそんなに愛読者ではないです。

ベストセラーになった「バカの壁」は読みましたが

ほかには数冊くらいしか手に取っていません。

そのうちの1冊が虫に絡めた随筆だったせいか

「虫が好きな人」と印象が、とにかく深い。

そして「猫が好きな人」でもありますね。

終章は、猫のまるの話

最後の章「ヒト、猫を飼う」は、飼い猫だった

まるのプロフィールから始まります。

そしてまるが死に至った様子、まるがいなくなった後のこと。

「享年十八。でも私は聞かれたら十九歳でしたと言う。十九歳まで生きて欲しかったから」

という一文は、まるへの愛が溢れていて切なくなり。

思わず我が飼い猫に目を向けて「長生きしてね」とつぶやいていました。

「月刊新潮」に連載されていてたエッセイをまとめた本なので

話がいろんな方面に渡っています。

またなんらかの解答だとか解決策を提示している本でもありません。

とはいえ、ものの見方は一つじゃないことを教えてくれたり

そうそう、こんなこと自分も少し考えてたなあと言語化してもらえたり。

なのに、肩肘張らずに読める1冊です。

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